電験とIT系の資格はどちらが難しいか? ~ 電験三種の難易度を考えてみよう ~

電気主任技術者の資格は難関資格であると、よく聞きます。
今回のお話は、途中まで読んでやめてしまうと誤解をされて、「電験はやっぱりむずかしいのだなぁ」 とネガティブに終わる可能性があります。(笑)

そうではない話をしたいのです。
ですから、興味を持たれた方は最後までお付き合いください。最後まで読む自信がない方は、どうかご遠慮ください。

1.電験三種の合格率は?
2.IT系の資格の合格率を見てみる
3.電験二種、電験一種の合格率は?
4.ITエンジニアと電気主任技術者の環境の違い
5.ITエンジニアと電気主任技術者は、”どちらが難しい”ということはない
6.資格の難易度について、もう一度考えてみる
7.電験は試験の性質を理解すれば、対策できる資格である


1.電験三種の合格率は?
では、もう一度。「電験三種は、非常に難易度が高い資格である。」実際にはどのくらいの合格率なのでしょうか?
電験三種の試験は、毎年9月上旬に試験をして、10月20日前後に結果が発表されます。

【平成28年度 第三種電気主任技術者試験の実績】
受験申込者数 66,896
受験者数 46,552
受験率 69.6%
合格者数 3,980
合格率 8.5%
【科目別合格者数 (合格率)】
理論 6,956 (18.5%)
電力 4,381 (12.4%)
機械 8,898 (24.3%)
法規 4,985 (14.2%)
全体 13,457 (28.9%) ※4科目合格者を含む

 
数字だけみると、確かに厳しいですね。
参考: 電験三種 試験データ


2. IT系の資格の合格率を見てみる
では、IT系の資格はどうなのでしょうか?「IT系資格はジャンルが違うのではないか」と思われるでしょ?でもここでは参考に、同じ経済産業省所管の情報処理試験で見てみることにしましょう。平成28年度のデータです。平成29年度から新しくなる情報処理安全確保支援士 (SC)は、情報セキュリティスペシャリストのデータです。ITパスポートは除いています。

※ (   )内は合格率(以下同様)

● 基本情報技術者 (FE)
受験申込者数 136,376
受験者数 99,999
合格者数 26,591 (26.6%)
● 応用情報技術者 (AP)
受験申込者数 96,947
受験者数 63,293
合格者数 13,312 (21.0%)
● プロジェクトマネージャ (PM)
受験申込者数 16,173
受験者数 10,263
合格者数 1,491 (14.5%)
● データベーススペシャリスト (DB)
受験申込者数 13,980
受験者数 9,238
合格者数 1,620 (17.5%)
● エンベデッドシステムスペシャリスト (ES)
受験申込者数 4,205
受験者数 3,148
合格者数 543 (17.2%)
● システム監査技術者 (AU)
受験申込者数 3,635
受験者数 2,524
合格者数 360 (14.3%)
● ITストラテジスト (ST)
受験申込者数 6,676
受験者数 4,594
合格者数 645 (14.0%)
● システムアーキテクト (SA)
受験申込者数 8,157
受験者数 5,363
合格者数 748 (13.9%)
● ネットワークスペシャリスト(NW)
受験申込者数 18,096
受験者数 11,946
合格者数 1,840 (15.4%)
● ITサービスマネージャ (SM)
受験申込者数 5,279
受験者数 3,555
合格者数 502 (14.1%)
情報処理安全確保支援士 (SC) ※ 旧 情報セキュリティスペシャリスト(SG)
受験申込者数 59,356
受験者数 40,314
合格者数 5,992 (14.9%)

合格率の数字だけを比較すると電気主任技術者試験の方が、難易度が高いのではないだろうか?
と思ってしまいますね。しかし、基本情報技術者試験、応用情報技術者試験あたりと、高度情報技術者にあたる試験の合格率に着目してください。高度情報技術者資格の合格者は、人数が少なくなるものの、合格率はどれも15%前後です。


3. 電験二種、電験一種の合格率は?
一方、電気主任技術者試験の上位資格は下記の通りです。合格者数も少なくなりますが、合格率は格段に下がります。下記は平成28年度のデータです。

● 電験二種(第二種電気主任技術者)
受験申込者数 9,384
受験者数 6,521
合格者数 459 (7.0%)
● 電験一種(第一種電気主任技術者)
受験申込者数 2,129
受験者数 1,519
合格者数 75 (4.2%)

 
これは一体どういうことなのでしょうか?
情報処理試験の上位資格の合格率はどれも15%前後なのに、電気主任技術者の上位資格の合格率は1ケタときびしいですね。情報処理技術者試験の方が上位資格に対して、難易度をおまけしているのでしょうか?
そんなことはないと思いますが。


4. ITエンジニアと電気主任技術者の環境の違い
IT系資格は合格率がそれほど厳しくなっていないのに、電験は厳しい。この違い。やっぱり、電験は特別なのでしょうか?
いえいえ実は、IT系の資格取得を目指す方と、電験(電気主任技術者)の資格を目指す方の環境の違いが大きいということに原因があると考えられます。
IT系の会社 ハードメーカ、ソフトメーカ、システムインテグレタなどの会社では、常に仕事が試験の課題そのものになっているケースがとても多いのです。会社によっては、新卒で内定が出ると入社までに(または入社直後の秋)「基本情報技術者」を取得することを必須とする場合もあるようです。常に最新の技術を習得していかないと生きていけない業界です。
資格がないとやってはいけない仕事ではないですが、常に勉強を積み上げていかないと、仕事にならないものなのです。

一方、電気主任技術者はどうでしょうか?
電力会社などの方もたくさんいますが、ビル管理・施設管理、電気工事関係会社、あらゆる製造業(特に工場)などの方ですね。自分の現場での仕事には従事しますが、電気主任技術者の電気の保安業務は、原則資格がないとできません。しかし、資格を取得すると特にそれ以上勉強しないと仕事ができないわけではありません。
また、IT資格取得を目指す人に比べて、資格を取る前から常に勉強をしているという人もあまりいません。


5. ITエンジニアと電気主任技術者は、”どちらが難しい”ということはない
IT技術者は、常に勉強を続けないと仕事にならないわけです。だから、常に勉強を続けます。資格を取る前も取った後も。しかし、電気主任技術者は、資格を取るために勉強を始めます。資格を取れば、IT技術者ほどには勉強はしなくて済みます。(法改正とか、全然しないわけではないですよ)
IT系の資格や電験の資格は、取得するためには、自分自身が勉強しないと「合格のテクニック」だけでは克服できない資格です。”どちらが難易度が高い”ということはないかもしれませんね。(比較すること自体ナンセンスではありますけど)

ここでもう一度、電験三種の科目合格者のデータを見てください。各科目とも合格率は2ケタです。
例えば、情報処理試験の「基本情報技術者」、「応用情報技術者」、「高度情報技術者試験」(データベーススペシャリスト等の資格)がひとつの資格だったら、電験と同じようなものになるかもしれませんね。


6. 資格の難易度について、もう一度考えてみる
電験の資格やIT系の資格(特に高度技術)は、自分自身が勉強しないと「合格のテクニック」では克服できない資格です。例えば、「建築士」などどうでしょうか?学校に行って勉強しますよね。そして、「社労士」、「税理士」、「行政書士」、「司法書士」はどうでしょうか?想像してみてください。合格するために、わずか10日から15日の講習会に参加をしたり、予想問題集や過去問を適当にやって合格する方はほぼいないでしょう。過去問を中心に対策することは難しい試験だと想像できますね。そして、IT系資格については、受験者は常に勉強することも仕事だと言っても過言ではありません。

一方、対照的資格だと思われるのが、「衛生管理士」、「危険物取扱主任者」、「工事担任者」、「宅地建物取扱主任者」などでしょうか?合格率も高い。電気の資格でも「電気工事士」もこれにあたるのではないでしょうか。これらの資格取得のポイントは、過去問題を覚えると比較的簡単に突破できるところなのです。「資格を活用するためには、一定のことを覚えていればよいですよ」という資格なのです。乱暴に表現すると「ポイントを覚えてしまえば、なんとかなる資格」といえそうです。

基本から勉強しなくてはならない資格 (難易度が高い)
「建築士」、「社労士」、「税理士」、「行政書士」、「司法書士」、「IT系資格」、「電験」

ある程度過去問対策で突破できる資格(比較的易しい)
「衛生管理士」、「危険物取扱主任者」、「工事担任者」、「宅地建物取扱主任者」、「電気工事士」


7. 電験は試験の性質を理解すれば、対策できる資格である

翔泳社アカデミーの講座は、たくさんの受講生がいます。
みなさんが資料請求された時によく「これで合格できますか?」という質問を頂きます。私たちは、「電験に予想問題はありません。○○さんが資格の特性を理解して、ご自分自身のペースで勉強をされないといけません。○○さんは、お仕事されているでしょうから、どのくらいの時間は勉強できそうですか?その手助けには私どもの講座がおすすめですよ。」というお話しをしています。その上で受講された方がたくさんいらっしゃるのです。
電験に合格するためには、過去問題を中心に対策したり、講義をただ視聴していてもだめなんです。テキストで基本問題を講義を聴きながら、自分自身でやってものにするのです。そして、演習を繰り返すのです。その上で過去問に取り組むと効率的です。電験には、試験の予想問題はありません。知れば合格できるような試験の出題傾向などありません。みなさん、試験の性質を勘違いされているのです。そのため、過去問対策(過去問題対策講座に出て解き方を覚えるとか)をして、わかったつもりで、最初の受験で全く歯が立たなかったということになるのです。

電験は試験の特性を正しく理解して、最小限必要な勉強をするということが、合格への近道であり、受験される全員にそのチャンスはあるのです。電験は試験の性質を取り違いをしなければ、誰にでも決して、突破できないような資格ではありません。
話を整理しますと、電験三種の試験対策は「問題の解き方を暗記する」というような学習でなくて、「自力で問題を解くこと」ができるような学習が必要です。翔泳社アカデミーの電験三種講座は、初心者や文系の方でもカリキュラムに沿って学習すれば、習得できるように開発しております。

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参考:初心者にやさしい電験三種講座とは?「教材の特徴」
参考:確認しよう!「合格に必要なこと」
参考:たくさんの合格した翔泳社アカデミー受講生のレポート「みんなの合格体験記」
参考:役に立つ「電験三種 試験テータ」

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