電験三種は、不況に強い資格

電験三種は毎年おおよそ6.5万~ 6.8万名が受験申込みをします。合格率は低く10%を下回る試験なのに、どうして毎年そんなにたくさんの方が受験するのでしょうか?
試験データから見える「不況に強い電気主任技術者」の話です。

Ⅰ 電験三種試験における過去データの推移を見てみる
Ⅱ 電験三種申込者大幅増加の原因はリーマンショック
Ⅲ 東日本大震災と電気主任技術者
Ⅳ 現在でも電気主任技術者は足りない
Ⅴ 今も増えている電験三種の受験申込み

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Ⅰ 電験三種試験における過去データの推移を見てみる

電験三種の過去のデータを簡単に並べてみましょう。

H28年: 申込 66,896  受験 46,552 合格 3,980 ( 8.5%)
H27年: 申込 63,694  受験 45,311 合格 3,502 ( 7.7%)
H26年: 申込 68,756  受験 48,681 合格 4,102 ( 8.4%)
H25年: 申込 69,128  受験 49,575 合格 4,311 ( 8.7%)
H24年: 申込 68,484  受験 49,452 合格 2,895 ( 5.9%)
H23年: 申込 67,844  受験 48,864 合格 2,674 ( 5.5%)
H22年: 申込 68,471  受験 50,794 合格 3,639 ( 7.2%)
H21年: 申込 64,259  受験 47,593 合格 4,558 ( 9.6%)
H20年: 申込 54,509  受験 40,140 合格 4,361 ( 10.9%)
H19年: 申込 55,234  受験 40,608 合格 3,647 ( 9.0%)
※( ) 内 合格率
※2017年1月10日現在のデータ

データの平成 21年度に注目してください。受験者数が突然 1万名以上増加しています。合格率は、平成 22年度から下がり、平成 23年度、平成 24年度が 5%台とかなり厳しくなっています。そこからの合格率は 8%前後と相変わらず低いけれど、落ち着きを取り戻しているようです。いったい平成 21年度に何があったのでしょうか?

電験三種 試験情報・試験データ

Ⅱ 電験三種申込者大幅増加の原因はリーマンショック

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平成 20年 (2008年) 9月15日に世界的に大変な事件が起きました。
米国の投資銀行であるリーマン・ブラザーズが破綻したことで、世界的な金融危機が発生したのです。日本でもその当時の日経平均株価が 12,000円台から翌月には、半分の 6,000円台まで下がりました。そうです。あのリーマンショックです。
翌年3月には新卒内定者が入社取り消しされるなど、1990年代後半のバブル崩壊以降、たいへんな就職氷河期に突入しました。新卒でそうなら、転職はとんでもなく厳しい時期でした。この就職氷河期は、平成 25年(2014年)位まで続きました。昭和 63年~平成 5年生まれ位の人たちの就職は、たいへんな時期だったと思います。平成 21年に急に受験申込みが増えた理由は、この不況によるものだと推測されます。
電気主任技術者は不景気に関わらず、慢性的な人材不足でした。電気技術者たちの仕事は、好景気・不景気に関わらず、必ず必要なものであったからです。職がない人たちが転職のために電験の資格取得を目指そうとしたわけです。

Ⅲ 東日本大震災と電気主任技術者

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そして、平成 23年 3月11日には東日本大震災が起こりました。
就職難であるのに、電気主任技術者は人員不足のままでした。また、時の政権が公共事業を一気に減らしてしまったので、震災復興に貢献できる会社は減っていて、ますます深刻となりました。工事関係の人口が減っていて、復興を急がなくてはならないのです。しばしば、ニュースで工事の案件はあるけど、受けることができる会社が少ないと報じられていました。
そして、電気主任技術者も相変わらず足りなかったのです。当時、翔泳社アカデミーにもいろいろな会社から電験の資格取得に関しての相談を頂いたものでした。

Ⅳ 現在でも電気主任技術者は足りない

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現在日本では、あらゆる施設が大型化されています。ビルは大規模商業施設と一体となって建設されています。マンションもタワー化されて、全国で建設ラッシュとなっています。主要都市にある駅に注目してください。駅も、隣接ビルと一緒に新しく、大型に建て替えられています。海外での生産ラインが日本に戻ってきているものもあり、再び Made in Japan の製品も増えています。
2016年の電力自由化により、様々な会社や団体が発電に参入しています。そして、ますます電気設備の保安の仕事が増えていくわけです。

Ⅴ 今も増えています電験三種の受験申込み

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電験三種の過去のデータでもう一箇所気になるところがありますので、指摘しておきます。平成21年度に受験者数が増えて、合格者も増えました。その後平成 23年度に合格率が 5.5%と下がりました。
この話はあくまで私見であり、本当に想像です。電気の安全管理をする資格ですから、実力がない人を資格者にしないように、試験センターも少し慎重になったのではないかという気がするのは、私だけでしょうか?
ここのところ就職・転職市場も回復しました。しかし、電験三種の受験申込みは平成21年度以来今も増えたままです。

電気主任技術者のニーズは、ずっと続きます。建物には電気が必要だからです。翔泳社アカデミーは、電験三種を目指す全ての方を応援したいと思います。どうかみなさん、合格を目指して頑張ってくださいね。

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